開発ストーリー

構造解析ソフトウェア随一の速度を誇る、
「ADVENTURECluster」のソルバー開発。
開発のバックステージについてインタビューしました。

当社が開発した「ADVENTURECluster」(アドベンチャークラスター)は、一億自由度以上の大規模モデルの構造解析を超高速で実現する国産ソフトウェアです。その中でのソルバーはPCからクラスター、スーパーコンピューターなどあらゆる環境で稼動。並列実行により複雑で大規模な解析モデルも速く計算できます。そのソルバ開発部の部長、柴田さんに詳しい話を聞いてみました。
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ソルバーのADVENTUREClusterならではの特徴とは?

構造解析のソフトウェアは本当にたくさんあります。その中でも解析のスピードが一番早い、というところが当製品の特徴です。解析時間に数十時間、場合によっては数日から数か月かかるものがあります。その中でも特に大きいモデルを早く解析できる、その特徴が他の追随を許さない当社製品の売りであると自負しております。

例えば数年前の話ですが携帯電話の解析において節点を1億まで増やし、当時のスーパーコンピューターを使用した解析では他のソフトウェアの場合では数ヶ月かかるところを当製品では数日で結果を分析できました。この「速さ」を軸として、これまでに多くのユーザー様にご利用頂いております。

解析スケールが大きくなった場合、他のソフトウェアでは乗算またはそれ以上の負荷がメモリにかかりますが、ADVENTUREClusterの場合は解析内容に準じてメモリの負荷がかかる仕組みになっており、処理時間が格段にスマートに抑えられるというところが特徴です。そのため大きなモデルが扱えるという特徴があります。

ソフトウェアの開発に関わった経緯

私は大学院の研究室で研究室独自のソフトウェアを開発し、それを用いて物性物理の研究をしていました。その中でプログラミングの面白さに興味を持ち、仕事としてもソフトウェア開発をやっていきたいなと考えたのがきっかけです。

やりがいを感じていること

当たり前のことですが、ソフトウェアは正しく作れば正しく動く。つまり、正しく動かない場合は何処かに原因がある訳です。その箇所を探りながら、ソフトウェアの開発を進めていきます。最終的に正しく動作したときの喜びは、費やした期間が長いほど強く感じられるものです。

例えば芸術などの分野でいうと、評価する方によって評価の内容が変わってきたりすると思います。ソフトウェアやプログラミングの分野でいえば良いものを作れば明確に形として現れるので、目指すべき先がはっきりしています。自分が納得できるいいものが作れれば、評価につながっていく。そこが達成感に繋がっています。

開発の節目ごとに得られる達成感が、一番のやりがいだと感じています。

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今までに難航したこと、解決策

ADVENTUREClusterは速さという点で、すでに高い水準にあります。競合他社のソフトウェアも時代と共にその速度を上げてきています。それに負けないように速さを上げて行く必要があるのですが、トップランナーとしてさらに後方に追いつかれないようにスピードを上げて持続していくことに難しさを感じることもあります。

その解決策として、常にアンテナを張って新しい情報を取り入れるようにしています。文献を調査して新しいアイデアを収集したり、自分のアイデアを試しながら解決を目指しています。

日々の業務で注意している点、成果について感じていること

ソフトウェア開発において広い視野で業務を俯瞰すること、狭い部分を突き詰めることは両方大切です。

どうしても一人ひとりの各作業者では視野が狭くなりがちです。ソルバーは部分的な開発になるので、ソフトウェア全体としてみることが難しく感じる事があります。そこに気がついたらADVENTURECluster全体を俯瞰して見直すことで目的を再認識し、部分的な機能も更に深く作っていくことを目指す。開発者としては狭くて深い観点ももちろん必要ですが、一歩うしろに引いて俯瞰して見る、このことに留意しています。

細かい部分に拘りながら、ユーザー目線も見失わない、そんな事を注意しています。

業務を通じてお客様と専門的な話をしながら、そこに特化した機能について追求していく、そこに面白みを感じています。例えば、モノづくりに携わるお客さまは、常に良い製品開発を目指しているため、解決すべき多くの課題も抱えられておられます。当社の製品をご利用いただくことで課題解決を実現し、実際にその製品が世に出た時、またお客様より感謝をいただいたときには、とても大きな喜びを感じました。

チームのメンバーに対して心がけている点

開発には数ヶ月で結果を出すもの、毎年または数年かけて行うアップデートや新機能の開発など様々なものがあります。長期間で調査に時間がかかるものは研究要素が強く、中々成果が現れにくいものがあります。そういった長期間のプロジェクトが向いているメンバー、逆に短期間にきっちりと成果をあげるプロジェクトが向いているメンバー、その適正や本人の希望をチーム全体の比率を見渡しながら仕事を割り振っています。

アップデートや継続利用、今後の展開について

商用の構造解析ソフトの中で最も速い、それを維持して行くことが第一の目標です。その他にも、特徴ある機能開発ができたら良いと考えています。

現在は、最適化の機能開発を重点的に行っています。構造解析(応力解析)は、主にある負荷に対する構造物の壊れにくさを分析する手法です。これに対して、最適化はそもそも壊れにくい形状を導き出す解析手法です。

例えばエンジンなど、ここをこう変えると壊れにくくなる、という設計のヒントを得る解析です。便利な手法である一方、応力解析を何度も何度も解く必要があり、計算時間の長さが最適化計算の課題でしたがADVENTUREClusterの長所を生かすことで大幅に評価までの時間を短縮可能です。そういった経緯から、最適化に重点的に力をいれています。また、お客さまの個々のご要望にも、引き続き継続してお応えしてまいります。

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その他、伝えたい想いなど

コンピューターを使ったエンジニアリングをCAEと呼びますが、今後、実際の物体を壊すという実験を減らし、仮想的に結果を出すという解析はどんどん発展していくと思われます。その流れでそういった需要が増えていくと予想されますので、それと一緒に我々の事業も波にのって発展できていければと考えています。

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